下駄箱に、手紙――これは定番。
呼び出し場所が、体育館裏――目的は大抵二種類に分かれるが、場所は鉄板。
こーいったモンに、オリジナリティを求めてもしょーがないのかもしれないが、せめて場所だけでも変更してくれないだろうか。さわやかな初夏の朝に、あたしは重々しいため息をついた。
「また手紙?」
一緒に登校してきたアメリアが、あたしの手元を覗き込む。
「らしーわね。面倒くさいったらありゃしない……」
とはいえ、呼び出しを無視すれば、自宅にまで押しかけてくる輩もたまにいる。差出人が無記名ゆえ、相手が男か女かわからないが。男だった場合は、自宅に押しかけられると、とーちゃんがうるさい。
ここは、大人しく応じるしかないのだった。
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「――先生と、婚約してるってホント?」
ブロック塀と体育館に挟まれ、いつも薄暗いじめっとしたこの場所は、陰湿な呼び出しにふさわしい。
……他校なら。
あたしの前に寄り添って並ぶ、数人の少女達――その奥に注意を払いながら、あたしは努めて声を抑える。
「子供の頃の、口約束よ。……それより、どーせやりあうなら、場所変えない?」
あたしの返答に、嘘だの、乱暴者だの、騒ぎ立てる乙女達。
ああ、もー。せっかく、気を使ってやったってゆーのに、気づかれちゃうじゃない!
あたしの予感は的中し、彼女らの奥――体育教官室の窓――が開き、噂の『先生』が顔を出した。
「何やってんだー、お前ら?」
顔だけなら校内一と評判のセンセイのお出ましに、さっきまでのやり取りも忘れ、少女達は色めき立つ。あたしは天を仰いで嘆息すると、ガウリイせんせーを囮にして、こそこそとその場から立ち去るのだった――。
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ウチの学校で一番安全な場所。
それは間違いなく、体育館裏であろう。
女子からの呼び出しは、先ほどの通り。
これが男子からの
あの場所にいる限り、あたしは絶対安全で。
あの場所を指定される限り、あたしはまともにケンカもさせてもらえないのだった。
はぁ。
ベタなネタでスイマセン(汗
脳内設定では、子供の頃の口約束をぽろっとばらしたのはガウリイの方です。
素(天然)の場合は白ガウリイ、意図的に男子生徒をけん制するためにばらしたのなら黒ガウリイ。