「いーち、にーぃ、さーん、しーぃ…………」
校舎の中だけ、と限定してしまうと。
下級生だけのかくれんぼは、どうしても隠れる場所が決まってくる。
だって、上級生の教室や特別教室は入りづらいんだもの。
だから、教壇の陰か。
先生用の机の下か。
掃除用具入れの中か。
はたまた、カーテンに包まるか――。
夕日が差し込むこの時間帯。
ほのかに暖まった、裾の長いベージュのカーテンは、あたしのお気に入りの隠れ場所だ。
ちょっとだけ、埃くさいのはがまん、がまん。
くるくるっと、カーテンを巻きつけて。
出来るだけ上履きが見えないよう、つま先立ちして。
息を殺して、じっと待つの。
……走って、止まって。また走り出して、止まって。
ぱたぱたと、元気な足音が近づいてくる。
ああ。今日は、玄関に近い教室から探したのね。
じゃあ、そろそろだわ。
がらりっと騒々しい音と共に、誰かが教室の中に駆け込んでくる。
真っ直ぐ、あたしの方へ近づいてくると、背後でぴたりと足音は止んだ。
――くるわ、くるわ。もうすぐね。
「……リナ、みーつけたっ！」
元気いっぱいな声と同時に、カーテン越しにぎゅむっと潰さんばかりの勢いで抱きしめられた。
夕日の朱と、カーテンのヴェールと、ガウリイの腕に包まれる。
――あたしの一番大好きな時間。
小学校低学年ぐらいのイメージで。
他の隠れ場所も試したのですが、他の場所だと「みーつけた」→指差されて終わり、でつまんないと、脳内リナさんが申しておりました。